ザ・病気
インフルエンザの新しいワクチン【フルミスト】について
2024年から、鼻にスプレーするタイプの、弱毒化された生ワクチンが承認されました。これまでは不活化(生でない、死んだウイルスの成分を使った)ワクチンを皮下に1-2回注射するものしか認可されていませんでしたので、選択肢ができました。以下の特徴があります。
- 投与方法: 両鼻に0.1mLずつ噴霧、1シーズンに1回のみです。
ミスト状ですから、あっという間に終わります。痛みはもちろんのこと刺激感はほとんどありません。
お子さんにとってはかなり負担が減りますし、1回で済みますので忙しい保護者にとってもうれしいワクチンの登場といえるでしょう。
ただし、鼻汁のひどいときやアレルギー性鼻炎の方は、刺激に敏感で鼻の症状が悪化する可能性がありますのでおすすめできません。 - 対象年齢: 2歳から18歳(19歳未満)が対象です。
- 効果:
鼻の粘膜に生きたウイルスを付着させ、 インフルエンザウイルスが侵入する粘膜にIgAという抗体をつくるので、理論的には感染自体を予防できます。これに対し、従来の注射の不活化ワクチンでは血液中のIgG抗体を誘導するので、体内に侵入したウイルスによる重症化を防ぎます。
また、皮下注射のワクチンは毎年製造に選ばれる株が異なります。そのワクチン株が実際に流行したインフルエンザと異なる場合は効果を発揮できませんが、フルミストは生きたウイルスで免疫を作るため、流行したインフルエンザとワクチン株が多少違っても軽症化させる効果があるという報告があります。不活化ワクチンと生ワクチンの効果を直接比較したデータはないのですが、日本小児科学会はほぼ同等と判断しています。
ワクチンの効果が得られるのは、CDCガイドラインでは接種後2週間とされています。これも不活化ワクチンとほぼ同じです。 - フルミストの副作用
フルミストは両鼻に薬液を注入するため、接種後にくしゃみや鼻水が出ることがあります。また、喉に薬剤が垂れることもありますが、飲み込んでも問題はないのでご安心ください。
生ワクチンであることから、接種した人の約10%弱で数日間の発熱、約30%程度で鼻水・咳などのインフルエンザ様症状が出ることがあります。この時にインフルエンザの迅速検査を行うと当然陽性になりますので、ご注意ください。
また1-2週間(最長3-4週間)、周囲にワクチン由来のインフルエンザウイルスを暴露する可能性があります。周りに免疫不全状態の方や妊婦さんがいる場合は避けたほうがよいでしょう。
またすべての注射のワクチンと同じく、まれにアナフィラキシーショックが出てくる可能性があります。アナフィラキシーショックは、接種してから30分以内で起こることが多いので、接種後30分はお子さんの様子を観察・注意してください。 - 接種できない方
・年齢
・卵やゼラチンアレルギーがある方
・妊婦(不活化ワクチンは可能です)
・5歳未満の喘息児
・免疫抑制状態である方
・無脾症患者
・4週以内に他の生ワクチンを打った方
など